ちょっとiPadProのお絵かき性能をなめていたかもしれない(iPadPro使用感レビュー)

「なんで夏休みすぐ死んでしまうん?」
楽しかった夏休みも終わってしまって意気消沈しています、子猫2000です。
社会人も1ヶ月くらい休めないですかね?……あ、世の中機能しなくなりますね。無理ですね、はい。

iPad Proを使ってみたところ想像以上の使いやすさだったので、自分用の覚書も兼ねて記事に書いておきます。

私がiPad Proでお絵かきをするまでの経緯

最近絵描き界隈で「iPad Proがお絵かきツールとして凄い」という話をよく聞きますが、私は板タブ派のためあまり気にしていませんでした。「あーすごいのねー、そうだね~液晶タブレットみたいなもんだもんね~」程度の反応です。はい、全く興味なかったです。

なぜこんな反応なのかというと、液晶タブレットでお絵かきしたときに「なんだこんなものか」となってしまったという部分が大きいです。確かにペンを直接画面に向けて絵を描けるというのはメリットでしたが、紙に描くのと同等の感覚かと言われると疑問が残ったためです。個人的に気になったのは視差(と、お値段)でした。

液晶タブレットというと、「紙に絵を描くのと同等にデジタルで描けるもの」というイメージで定着していますが、実際に使用してみると幾つかの点で違いを実感します。
私の場合は視差が最大の違いでした。

液晶タブレットを触ったことの無い方のために説明すると、液晶タブレットの画面描画が行われるスクリーンと、実際の画面の表面には距離があります。これが原因になって、ペン先とカーソル位置にズレが生じます。これを視差と呼んでいます。人によっては気にならないようですが、私の場合「ん???」と気になってしまいました。

これが安い買い物だったら我慢したかもしれませんが、液晶タブレットは高額です。wacom製だと安いものでも10万円台前半からです。「このお値段を払って変な我慢をするのもなぁー」という気持ちと、「正直実際に使ってみて液晶タブレットに絶大なメリットを感じなかったなぁー」という気持ちから、私は現在”intuos pro”というwacom製の上位版板タブを愛用しています。”intuos pro”については、板タブにも慣れたことから思い通りに線も引けるし、以前使用していたエントリーモデルの板タブとペンの種類や筆圧感度の違いを実感できるため、十分に満足しています。


私が愛用中の板タブはコレです。
現在は後継機種がでていて、さらに筆圧感度が細かくなっています。

つまり、私の中では液晶タブレットは不要な存在となっていました。

そんな私ですが、出先で絵を描きたいという欲が最近増して来ました。
要はカフェとか、飲食店の待ち時間とか、旅行先とかでもお絵かきしたいなーって話です。

ノートパソコンと板タブをセットで持ち歩くのも悪くは無いですが、ちょっとかさばりすぎる感じ……
というわけで、タブレットPCが候補に挙がりました。

当初は大好きなイラストレーターのカントクが使用しているというwacomの”cintiq companion 2″を買おうかと思ったのですが、もう新品は出回っていなかったため断念。
その後ネットで調べた結果、最終的に2候補まで絞りました。
ドスパラから出ているWindows10タブレットPC「raytrektab」と、Appleから出ている「iPad Pro」です。
お値段はraytrektabが4万~5万程度、iPad Proと純正ペンのセットが10万ちょっと。
どちらも良いお値段なので、しっかり使い心地を理解した上で購入したいところ。

ドスパラの「raytrektab」はドスパラの実店舗で体験できるとのことなので、iPadはどうしようか……
実店舗で体験だとアプリとか勝手に入れられないよなぁ……
ここまで考えていてふと思い出しました。

「そういえば家族が iPad Pro 持ってるじゃん!」

そんな経緯で iPad Pro を借りてお絵かきをしてきました。

Wacomの液晶タブレットと比較して何が違うのか

というわけで家族の iPad Pro に”メディバンペイント”というtwitterで評判だったアプリを入れて2時間ほど絵を描いてみたのですが、これが凄く良かったです。
wacomの液晶タブレットで非常に違和感に感じたペン先とカーソルの視差も、iPad Proではさほど気になりませんでした。ペン先へのカーソルの追従も、素早くペンを動かしても気にならないレベルですし、当初不安に思っていた「ペンを持つ手にタッチ反応が誤作動しないか?」という問題も杞憂に終わりました。なにより液晶タブレットと違って軽いので、手軽に持ち歩けます。普段はデスクトップPCの置いてある机でしか絵を描けない私ですが、iPad Proならリビングでテレビを見ながらでも、寝室で寝転がりながらでも絵を描けます!
「そう、これだよ!これ!!」
この利便性は据え置きの液晶タブレットでは得られません。これがまさに私が欲していたものだと確信しました。

ここまで正直 iPad Pro が圧勝でしたが、wacomの液晶タブレットの方が勝っているなと感じた部分もいくつかあります。
まずはペンです。
iPad Pro に使用するApple純正のペンは満充電での使用可能時間が8時間ほどと聞いています。実際には本体の充電が先に切れるでしょうが、ペン自体に充電が必要というのは手間です。これは明らかに、バッテリー不要なペンを使用するwacomの圧勝です。
また、ペン自体の形や重さについてもApple純正のペンはwacomのペンには劣っていると感じました。
内部にバッテリーがある影響からか妙に重いです。慣れてしまえばなんて事はないのかもしれませんが、ペンとしては重量級という感じの重さです。また、形もデザイン性の良いシンプルな形状ですが、wacomのペンのようなエルゴノミクス感ある形状の方が個人的には持ちやすいと感じました。

また、筆圧感知についてもwacomの方が個人的には勝っていると感じました。
iPad Pro と Apple純正ペン の組み合わせでは「抜き」はしっかり検出してくれましたが、「入り」の検出が微妙だと感じました。私は「入り」が下手な自覚はありますので、単に合わなかっただけかもしれません。ですが、wacomの液晶タブレットでは「入り」もしっかり検出してくれていました。そこを考慮すると、個人的に軍配はwacom側に上がります。

最後に両者に共通する個人的な欠点として摩擦係数の低さを挙げておきます。
やっぱり紙に描くのと、ガラス面に描くのでは摩擦が違いすぎて、ハッキリと違和感を感じます。この辺はペーパーライクな描き心地にする保護フィルムなどが出ているので、いざ自分用に購入したときには使用を検討しています。

ところでメディバンペイントって?

特に気にせずに有名だったからという理由で「メディバンペイント」を今回は使用しましたが、PCとのデータ共有などが気になったので少し調べてみました。すると驚きの結果が……
メディバンペイントとFireAlpacaは姉妹です!

どういうことかというと、開発者が同じようです。
お絵かき界隈の方には「CloudAlpaca」というソフト名に聞き覚えのある方もいるかもしれません。
FireAlpacaにマンガを描くための機能と、クラウド機能(オンライン機能)をくっつけた機能拡張版みたいなものが「CloudAlpaca」です。FireAlpacaと違って、使用には無料の会員登録が必要となります。それ以外はFireAlpacaとほぼ一緒、そんなソフトでした。

その「CloudAlpaca」がいつのまにか改名していたようで、改名後の名前が「メディバンペイント」だったのです。

「なーんだ、お前FireAlpacaの姉妹だったのか!もっと早く言ってくれよー!」
という感じで、途端に親密感が沸いた私でした。

メディバンペイントはアプリだけでなくPC版も出ていまして、拡張子はFireAlpacaと同様の”.mdp”を使用するようです。

そして肝心のPCとの連携ですが、クラウド共有でサイズ制限なし!という無料ソフトとは思えないほどの太っ腹っぷり。
iPadでラフを描いてPCで清書をするつもりだった私にはココが一番重要でした。

「出先でiPadを使用して絵を描いたら、テザリングなりWifiなり使ってメディバンペイントのクラウドに保存すれば、それが家のPCでそのまま開ける」ということです。すばらしい!
もちろんPCで描いた絵をiPadから開くことも可能です。

まとめ

本格的なPCに接続する液晶タブレットとは違って、iPad Proでお絵かきをする場合、マシンパワーの問題から大量のレイヤーは使用できません。ですが6000*4000サイズの350dpi設定のキャンバスでレイヤー数10枚程度なら速度遅延などが気になることは一切ありませんでした。ペンや筆圧検知など不満点が無いわけではないですが、個人的にはwacomの液晶タブレットよりもiPad Proのほうが使い心地が良かったです。私が想定しているような「出先でもお絵かき(色ラフや、落書き程度)する」用途ならスペック的にも十分応えてくれます。レイヤー数を抑えて絵を描ける方なら液晶タブレット代わりにも使えるかもしれません。

何よりのメリットは手軽に持ち歩けて、気軽にデジタルでお絵かきを始められることだと思います。
こういったタブレットが1台あるとお絵かきの頻度が上がりそうですね。
「iPad Pro はいいぞ~。」

メディバンペイントがFireAlpacaと姉妹だったこともあり、私の中では一気にiPad Proが優勢になりましたが、一応raytrektabも試してみようと思います。
今回は以上です。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

追記:ちなみに後日結局iPadProをお絵描き用に購入しました。1年と2か月ガッツリお絵描き用として使った上でのレビューはこちらに書いています。