サバゲー界のCO2事情

引っ越しのため3週間ほどネット無し生活をしていました、子猫2000です。「ネット無し」とか生きられる気がしない! 絶対手が震える!! とか思っていましたが、案外生きられるものですね。

そんなこんなでネット無し生活をしている間に、うちのちょっぴりガス漏れ気味のマルゼン製M870(リアルカート式ガスショットガン)をCO2化する妄想が捗りまして、その際にCO2ガスガン関係について色々調べましたのでメモ書きついでにブログに書いておこうと思います。

現状のCO2ガスガンへの風当たり

あなたはCO2ガスガンを撃ったことがありますか?

既存のHFC134a使用ガスガンに比べて遥かに強烈なブローバック、破裂音のような迫力のある発射音、ガス圧の乱高下が発生しないことによる安定した弾道性能、挙げれば色々な魅力のあるCO2ガスガンですが、サバゲー業界で注目されだしたのはここ数年のことです。今日はそのCO2ガスガンの現状について書いていきます。

まずは現在CO2ガスガンがサバゲー業界でどんな立ち位置にいるか、について書いてみます。あくまで私の認識範囲内での話なので、同じ日本でも地域の差などで違う評価になっている、という可能性を前提にお読みください。

結論から言って、まだまだ業界への普及には程遠いです。

現在一般的に「CO2ガスガン」と呼ばれている物は、12g CO2カートリッジをマガジン内や、銃本体にセットし、そのガス圧によって動作するものを指しています。

その「CO2ガスガン」は海外のサバゲー界では普及が進んでいるようですが、日本では諸事情により賛成派、反対派が業界内で混在している状況です。それぞれの主張を大まかにまとめると下記のような感じになります。

賛成派

  • CO2は既存のHFC134aなどのフロンガスに比べて地球温暖化への影響が劇的に少なくエコである
  • CO2は既存のHFC134aなどのフロンガス利用方式より強烈な作動が楽しめる
  • たとえCO2が高圧ガスだとしても、2重3重の安全対策を施した状態で使用するなら安全である

反対派

  • 外部ソース全盛期の過去にCO2を動力源とした銃による事件が発生したので、CO2は危険である
  • HFC134aに比べてCO2は圧力が格段に高いので、悪意を持った人物が改造をすると危険である
  • これ以上、法規制が厳しくなるとサバゲー自体の存続が危ぶまれる

そして、現在日本の市場は実際どうかと言うと、安全対策を施して設計されたSTGA(業界団体)認可の製品と、海外から輸入された業界団体無認可の製品混在している状況です。例えば私が以前レビュー記事を書いたCarbon8製M45CQPはSTGA認可モデルなのに対して、APS製BlackHornetは海外から輸入されたSTGA無認可のモデルとなっています。たとえ業界団体が無認可のモデルであっても、初速や構造に問題が無ければ、法的には全くのホワイトである点には注意が必要です。

上記の通り、海外に比べて少ないながらも色々なモデルが売り出されているCO2ガスガンですが、サバゲーで使用しようと思った場合は注意が必要です。法律的には問題が無くとも、定例会などではサバゲー場のルールに従わなければならないためです。ややこしいですが、具体的には下記3種類のフィールドが混在している状況です。

  • 法定初速内なら動作方式を問わず使用可能なフィールド
  • 法定初速内かつ、STGA認可のCO2ガスガンは使用可能なフィールド
  • 法廷初速内でも、CO2方式のガスガンは使用禁止なフィールド

そうなんです、CO2ガスガンが使えないフィールドが多数存在します!

CO2ガスガン好きな私としては非常に残念ですが、依然としてCO2ガスガンに対する業界内の理解は深まっていません。CO2ガスガンを禁止しているフィールド運営側も、全部が全部CO2反対派かというとそうでもないようです。以下のような理由から仕方なく禁止している、という話もあります。

  • 人手不足のため作動方式が増えると説明に時間がかかってしまう。人件費削減目的。
  • 運営者はCO2に理解があるが、不特定多数が参加する定例会ではCO2反対派の方も参加するので、トラブルを防止するため。
  • 運営者はCO2に理解があるが、国があまりいい顔をしないので。(過去の事件がCO2ソースの銃だったため)

ここまで書いたように、CO2ガスガンに対する業界内の風当たりは依然として強いです。賛成派の私としてはもっと普及してほしいのですが、なかなか難しいようです。

法律的なお話

ところで、海外にはパーフェクトな出来栄えのガスショットガンがあるのをご存じでしょうか? APSという会社が出しているのですが、どのくらい素晴らしいかというと……

  • ライブカート(ショットシェル)方式
  • 実銃同様ショットシェルがチャンバーに送り込まれ発射
  • CO2を動作ソースとし飛距離20m以上
  • 多弾数(最大12発)同時発射可能
  • CO2なので発射音も良い

という感じのパーフェクトなショットガンなのですが、残念ながら日本には入ってきません。初速を銃刀法規定値以内に収めれば問題ないのでは? と思いますが、「高圧ガス保安法」という物が問題になるようです。CO2ガスガンを取り巻く法律の話としてご紹介します。

この記事を読んでいるサバゲー業界の皆様なら銃刀法についてはご存じだと思います。0.989ジュールを超えると法律違反になるアレです。こちらについて非常に見やすい図があったのでリンクを貼っておきます(外部サイトへ飛びます)。

では、先ほど紹介したAPS製ショットガンのお話の続きですが、問題は当該モデルのCO2がリキッドチャージ方式という点です。CO2を銃本体にプシューーーと注入する必要があるのです。

あなたが、普段HFC134aフロンガスをガス缶からガスガンのマガジンにプシューーーっと注入しているその行為がリキッドチャージです。HFC134aは高圧ガス保安法にギリギリ抵触しない圧力(特例対象)なのですが、液化CO2は抵触してしまう圧力(特例対象外)なのです。

ネット通販などで12g CO2カートリッジからマガジンにプシューーーっと注入するための器具を売っていたりする事があるようですが、違法なので絶対に購入してはいけません。

具体的にはCO2を別の容器に移す行為が違法となります。なので、市販されている12g CO2カートリッジを銃本体やマガジンにセットする方式なら問題ありません

圧力は実際どのくらい違うのか

ここまでCO2とHFC134aの話をしてきましたが、結局のところどのくらい圧力が違うのか数値で見てみましょう。よくサバゲー場で禁止されているグリーンガス(外部ソース型CO2)も比較用に書いてみます。

CO2

通常7MPa程度

HFC134a

35度で0.75MPa、20度で0.48MPa

外部ソース

レギュレータにより0.5MPa以下に限定される

これを見るといかに12g CO2カートリッジを使用する方式が高圧で動作しているか分かりやすいですよね。「そりゃ、あのいい音と強烈なブローバックが出来るわけだ!」と納得できます。

対して、サバゲー場でよく禁止されている外部ソースですが、意外にも現在ガスガンのソースとして主流のHFC134aよりも低圧で動作させています。ガスガン用の外部ソースレギュレータは改造防止策が施されており、現在では最大でも0.5MPaまでしか上げられない物になっています。ですが、過去の外部ソース全盛期時代にゲーム中にレギュレータを弄って高圧に使用する悪質使用者がいたため、業界内に根強く「外部ソース=危険」という図式が焼き付いているようです。結果として安全にも関わらず禁止としているフィールドが多いという状況になっています。

今後の予想

記事執筆時点(2020/03/22)では、日本国内メーカーの中でCO2ガスガン市場に参入しているのは未だ「マルシン工業」と「ハッチ(Carbon8ブランドを出している会社)」「タニオ・コバ」の3社のみとなっています。このいずれの企業も「STGA(全日本トイガン安全協会)」に所属しているので、同業界団体所属のエスツーエスなんかも今後CO2ガスガン市場への参入の可能性がありそうです。

また、「JASG(日本エアスポーツガン振興協同組合)」にサンプロジェクト(外部ソース≒グリーンガスシステムの販売元)が所属していることから、同団体所属のマルゼンやKSCもCO2ガスガン市場への参入の可能性はゼロでは無いと思います。

一方でCO2賛成派の多くの人が期待しているであろう業界最大手の東京マルイは「ASGK(日本遊戯銃協同組合)」に所属しています。また、HFC134a廃止の代替策として、作動性能が10%程度低下することを承知の上で混合ガスを新しく発売しています。以上を鑑みるに、残念ながら東京マルイのCO2ガスガン参入は現時点では望みが薄そうに感じます。

東京マルイが参入するとなれば、それこそ業界内全体の流れにも変化が起こりそうなだけに残念ですが、東京マルイもその点は認識しているでしょうから、万全の安全に対する自信を持ってからでないと参入してこないでしょう。

……CO2に参入しなくても、電動ガン売れてますし(笑

ただ、日本国内が手をこまねいている状態のままな一方、海外では急速にCO2ガスガンが普及しているようなので、このまま日本市場だけガラパゴス化していくのではないか、という不安も感じます。

もちろんメーカー側の安全対策も重要ですが、玩具と言えど道具の一種。私たちユーザー側も使っている道具に対する理解を深め、安全を意識していくことこそが市場の更なる発展に繋がるのではないでしょうか?

いちユーザーとしては、安全性を重視しつつ今後CO2ガスガン市場がより発展していくことを願っています。